第15回 標準原価と実際原価

現地従業員と日本人と異なる作業効率や生産性

海外で事業を展開するとき、大きな悩みのタネとなるのが、現地従業員と日本人との作業効率や生産性の違いです。
生産現場の高度化・システム化で高度経済成長を乗り越えてきた日本では、従業員一人一人のスキルをどのようにアップし、それぞれが抱える複数の業務をどのように最適化できるかに関心が向けられてきました。<br>
ところが、ここはタイ。歴史や文化も異なれば、会社で働くということはどういうことなのかといった考え方一つから大きく異なっています。

多機能化は混乱の原因

生産現場の未成熟な海外の市場では現場や個々人の能力に差があるため、まず業務を可能な限り単純化することが求められます。
複雑な組み合わせや多機能化は混乱の原因となりますので御法度。
日本にある業務スタイルを海外にそのまま持ち込んでも現場がこなせないばかりか、生産性の減退にもつながりかねません。

業務の単純化

タイなどの海外の市場にはそれぞれの現場にあった業務のあり方があり、それがまさに単純化というわけなのです。
在庫管理だけ、販売だけ、Invoiceや領収書を発行するだけ。
そういった細分化された仕事を一人一人に対し、責任とともにキチンと割り振ることができるかに成否がかかっていると言えるでしょう。

単純化された業務の最適化

もちろん業務を細分化するだけでは十分ではありません。
今度は、これら細分化された業務や人を有機的に機能的に結びつけて、最適化する作業が必要となってきます。
これが、いわゆるマネジメント。単純作業を繰り返すだけのスタッフには見えない機能的なつながりを理解できる人材が、次ぎに必要となってくるのです。
ただし、こうした人材は一朝一夕に確保することはできません。中長期的な視野に立って、採用の計画を立てる必要があります。

会社組織は縦割りか横割りか

以上の論点は、会社組織は縦割りであるべきか、横割りであるべきかという議論にも通じてきます。<br>
ある一握りの職人に業務が集中するような属人的な縦割り組織では、一時的ではあれ、会社は永続的にはもちません。
単純化された個々の横の組織が柔軟に有機的につながりあっていくことで、変化に強い本当の組織作りができると言えるのです。
このことは、突然のタイ人離職に対しても大きな効果を発揮します。